NewYorkScenery
nycyn.exblog.jp

ニューヨークの生活、MBA、仕事・・・
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
仕事をするなというルール
会計の授業で扱ったケーススタディ:

中堅投資銀行のトレーダーがSTRIPS債の取引で莫大な利益を上げ、会社から表彰される。
彼の取引は違法ではないものの、社内システムや会計制度の隙間を利用して利益を上げる手法であり、利益を出し続けるためには取引量を増やし続ける以外に方法は無い。
監査やバックオフィス等の牽制システムが機能しておらず、15年ほど前の話だから、VaRやリスクバジェットのような考え方もまだ無かった時代だろうか。
また、経営陣は彼の取引の怪しさに薄々気づきつつも、会社の利益拡大のために詳細な調査に踏み切らない。

雪だるま式に膨れ上がった彼のポジションは市場の現物残高の2倍を超え、取引の拡大をせずに決済を迎えると損失を計上しなくてはならない、という状況に陥り、最終的に会社は巨額の損失を計上し、彼は解雇されることとなる。

その後、会社は「彼のポジションを認識していなかった、認識していたらすぐに辞めさせた」とシラを切り、彼は「社内外の監査をパスしているということは取引手法にお墨付きをもらったということ、だから自分は会社が正しいと認めた取引を行っただけ」と開き直る。
そして、利益追求のあまりにリスク管理を怠った会社と、確信犯的に危険な取引を膨らませた彼との間で泥沼の裁判が始まる。


* * * * *

よくある話で、日本だと某商社の銅取引で似たような問題が発生したことはご存知の方も多いだろう。

で、このケースとは直接関係ないんだけど、会社と従業員の関係についてあることが頭に浮かんできて、授業は殆ど聞いていなかった。。。


f0081958_10102868.jpg


多くのアメリカ人が、日本人は働き者だと思っている。
僕も例外ではなく、アメリカまで来て仕事と勉強をしている姿は勤勉家に見えるらしく、スタディグループのメンバーは僕のことを"24/7"と呼ぶ。(1日24時間・週7日間働くという意味)

一方、アメリカ人は自分の時間を大切にするため、一部のクラスメートは「忙しくて宿題が出来なかった」と言いながら、週末はバーベキューに行っていたりする。
彼らにとって、家族や友人との時間は仕事・勉強とは別枠かつ優先的に管理されており、その時間を確保した後に残った時間内で出来ることだけをやる。
その残った時間が短ければ「忙しい」ということになるわけで、余暇の時間を削って仕事や勉強をするという発想は無い。

僕の発想は逆で、仕事と勉強に必要な時間を先に計算し、残った時間があれば余暇にまわそうと思う。(こういう日本人は少なくないだろう。)
アメリカ人でも、投資銀行などでバリバリ働く人の中にはそういう人もいるし、クラスメートの中には僕よりずっとがんばっている人も沢山いるけど、アメリカ人全体の中ではごく一部だと思う。


* * * * *

一部の日系企業では深夜残業・休日出勤は当たり前だった。
しかし、最近では労働基準監督署の摘発などでサービス残業が問題となり、残業代を払いたくない一部の企業は、ある時間になると従業員を強制的に帰宅させていると聞く。
加えて、情報管理は厳格化する一方だから、仕事の資料を自宅へ持ち帰るのは困難になってきている。
結果として起こるのは、「仕事量は変わらない、でも早く帰れ、自宅で仕事はするな」ということになり、職場での能率を上げる以外に方法は無い。
これはこれで正しい流れだ。

しかし、能率を上げても仕事が終わらない場合、多くのアメリカ人は「仕方が無い」と思うが、一部の日本人は「何とかしなければ」と思うだろう。
その結果、彼らは「自宅で仕事はするな」というルールを「個人リスクで」破り、自宅で仕事をして成果を出す。
上司もルール違反を知りながら見て見ぬふりをしてそういう人を褒めるため、周囲の人たちも「自分もそうしなければいけないのか」と思ってしまいがちだ。


また、(古いタイプの)日系企業は「労働コスト」の意識が希薄だ。
仕事が増えた場合、他の仕事を削ったり人員を増やすのは最終手段であり、残業で対応するにも残業代が増えるという意識は薄く、基本的にはサービス残業(部下の奉仕)で対応すべきと考えている。
ここで「残業代は・・・」などと言おうものなら「がめつい奴」と言われ、こういう事を言い出しにくい雰囲気を醸成している。
だから、新たな仕事が発生しても「コストが増加する」という認識は殆ど無い。


こうした事情を踏まえると、サービス残業したり持出し禁止の資料を持って帰って仕事をするのは「個人の責任」ということになり、会社は知らんぷり、問題が発覚すると「会社としては禁止していたが担当者の独断により・・・」といった説明となるわけである。


そういう僕も、サービス残業は当たり前だと思っていた。

日系企業は実質的に解雇権を放棄しているわけだし、外資に比べれば福利厚生も手厚いわけで、そんな状況で多少残業したからっていちいち残業代を請求するのはフェアじゃない。
残業代を請求したいなら業務時間内のムダを100%排除しろ、私語は一切禁止、トイレにも走って行けよ、それが嫌なら残業代を請求するな、と思っていた。
ロクに働いてない奴ほど残業代にうるさそうな気もするし。(偏見?)
僕としては、業務時間内だって私用メールしたりネットサーフィンするかわりに、いちいち残業代が云々とは言わない労使の関係が心地よかった。

だから、早く帰れとか資料を持ち出すなとか、ヒマ人が思いつく戯言だと思っていた。
実際、そんな奴ばかりだと会社は回らないし。


一方で、スポーツと同様、ビジネスにもルールは必要だと思う。
仕事もちゃんとやりながらこのルールをきっちり守っている人から見れば、日本にいた頃の僕は「ルール違反をして仕事を仕上げていた」ということになる。

ただし、理屈では時代の流れを理解しているつもりだけど、いざ案件を目の前にして時間が足りなくなると、「時間が足りないから出来ません」とはとても言えない。。。


バブル時代の日本も、外国から見れば同じだったかもしれない。
ストイックに経済発展を求めて経済大国となったけど、外国から見れば「そこまでストイックに働けば発展するよ」という妬みを含んだ批判があったと思う。
アメリカとの関係で言えば、その後日米の景気は逆転し、アメリカは仕事と余暇のバランスを取りつつ、短期的な落ち込みを経験しながらも長期のトレンドとしては発展を続けている。
一方、日本は十数年の不況を経験したけど、その間も日系企業の勤務状態はあまり変わらず、働けど成果無く、虚しさを味わってきた。


f0081958_10104949.jpg


日本を離れて2年以上経つけど、今の日本の雰囲気はどうなっているんだろうか?
東京の人とは頻繁に話をするけど、温度感みたいなものを電話越しに把握するのは難しく、実際に自分の肌で感じてみないと分からない。

僕はあと数年で日本へ帰国する予定だ。
その時、どういうスタンスで仕事に取り組むのか、今からイメージトレーニングをしておくのも無駄ではないと思う。

「早く帰れ、資料を持ち出すな」ルールは、短期的にはアウトプットの低下をもたらすかもしれないけど、長期的には能率やモチベーションの向上という形でのメリットがあるかもしれない。
また、無駄な仕事の排除につながるという効果もあるだろう。

なんて書きながら、「こんなルールを完全に徹底できるわけが無い」とか「働きたい時に働いて何が悪いんだよ」と思っている自分もいる。


と、ここまで読んでくださった方は「お前のスタンスはどっちだよ!」と思われているでしょうが、文章にも表れている通り、どっちつかずなんですわ・・・
理屈では「僕も変わらなきゃ」だけど、本音は「うっとうしいルールだな」って感じかな。

まあ、大胆にスタンスを変えられるとは思わないけど、時代の流れと捉えて柔軟に対応していきたいもんだ。
なるべく・・・ね。
[PR]
by nycyn | 2006-08-21 10:42 | 雑感