NewYorkScenery
nycyn.exblog.jp

ニューヨークの生活、MBA、仕事・・・
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
規制とコスト
先週報道されたニュース:

Nikkei Net
金融庁05年度の行政処分3倍、顧客保護鮮明に
金融庁が2005年度(05年7月―06年6月)に発動した金融機関などに対する行政処分の件数は250件と04年度(84件)と比べ3倍に急増した。利用者・投資家の保護や経営の内部管理体制に問題があった金融機関に対する処分が大幅に増えた。不良債権問題が峠を越えて「金融平時」を迎え、金融庁は金融機関の経営内容から利用者保護へと監督・検査の軸足を移している。

利用者保護が進められていることにより、我々は安心して金融取引が出来るわけだ。
ということが言いたいのではない。
この記事、何かひっかかるんだよね。

個々の行政処分の内容を細かくは見ていないけど、殆どは金融機関側に過失があり、まっとうな行政処分なんだと思う。
でも、違う見方をしてみると、「行政処分の増加=利用者保護」という図式により、「行政処分の件数を増やしたい、行政処分が多いほど金融庁は良くやっている」という風潮が蔓延していないか。


日本が長い不況を経験している間、金融機関の視点が収益獲得からリスク管理重視へと移っていった。
過度なリスク管理が行われたこともあり、そうした中で貸し剥がしのような問題も起きた。
そして、「リスクを取らないとリターンは生まれない」という超基本的なことが忘れられ、「リスクを減らしさえすれば良い」という風潮さえ生まれた。
その結果、規制当局や金融機関内部の牽制組織が「妙に」力をつけ、発言力を増していった。
それに便乗して、牽制組織でもないくせに、無責任かつ中途半端な「リスクの指摘」をすることで役務を果たしている、と勘違いする奴まで出てきた。


規制当局や社内の牽制機能は必要であり、重要な役割を担っていることは分かっている。
彼ら無くして健全な市場の発展はあり得ない。
でも、彼らが「過度に」活躍することは、経済的観点からは単なるコストの増加である。
サッカーで審判が目立ちすぎる試合が面白くないように。(ちょっと違うか・・)

銀行では1円のズレも発生させてはならない、
適合性原則への遵守を担保するためには、コレとコレとコレとコレとコノ書類を利用者に渡し、説明したことを担保するためにココとココとココとココとココにチェックをさせ、
これらを「寸分の狂いも無く」実行するようにとの行政指導のためにどれだけのコストがかかり、結果としてそのコストが利用者に転嫁されている、
ということをもっと考えた方がいいのではないだろうか。
記事のタイトル「行政処分3倍、顧客保護鮮明」というのを目にすると、日本全体が長い不況で思考停止に陥っているのでは、と思ってしまう。


規制当局は大蔵省→金融監督庁→金融庁と名前を変え、企画・監督・検査の機能を離したりくっつけたり、というのを繰り返しながら現在の姿となった。
そして、記事にある「金融平時」を迎えた今、金融庁は「行政処分の件数」に自らの存在意義を見出し、既得権益を守る盾として利用してはいないだろうか?
うがった見方だけど、長年スポットの当たらない地味な仕事だった牽制機能に脚光があたり、有頂天になって仕事の本質を忘れてはいないだろうか?
本質からそれた過剰な行政指導により、本来不必要なコストが増加しているという認識はあるのだろうか?

強すぎる農薬が虫を殺すと同時に人体にも悪影響を及ぼすように、
ハブ退治を目的に導入したマングースが増殖しすぎて農作物を荒らしているように、
過剰な規制は結局は国民負担となるはずだ。

因みに、専門家の間では、マングースがハブを本当に退治しているのか疑問視する声もあるらしい。

f0081958_941584.jpg♪置き換えてみよう♪
マングース→金融庁
ハブ→金融機関
退治→改善
農作物→国民の利益


(写真はhttp://www.ryukyumura.co.jp/02_habu/p02.htmlから)

* * * * *

この記事を見てそんなことを考えていたんだけど、今日のウォールストリートジャーナルにタイムリーな記事が載っていた。
最近、SEC(米国証券取引委員会)による金融機関(特にファンド運営会社)への過剰な規制が議論を呼んでいて、そのことに関する記事。
日本の規制当局もこの記事を読んで何かを感じてくれるのかな? (読んでないか・・)


The Wall Street Journal, "Over-Lawyered at the SEC" の抜粋

There were four fundamental problems: First... Second... Third, the SEC had no idea what the costs or economic effects of its regulatory solutions might be. Last, the SEC failed to adequately consider less-invasive alternatives to its majority's preferred approach.

(SECを巡っては)4つの問題があった。(1・2は省略)
3点目は、規制によってもたらされる経済的なコストの視点をSECが持っていなかったこと
4点目は、一般ウケする(厳しい)規制に固執し、柔軟(かつ効果的)な代替策を検討していなかったこと。

As SEC Chairman Chris Cox testified before the Senate Banking Committee yesterday, the SEC now needs to adopt a panoply of emergency rules to undo the effects of its ill-advised prior effort to extend its regulatory reach to hedge funds.

SECのヘッドであるコックス氏は上院の委員会で次のように述べている。
「ヘッジファンドに対するSECの権限を強化しようとしたこれまでの愚かさを改めるため、SECは急いで多くの対策を講じなければならない。」

This is surprising for an agency that's directed by Congress not simply to protect investors, but to do so by facilitating the efficiency and functioning of our capital markets, and by improving innovation and competition.

SECにとって驚きだったのは、単なる投資家保護の観点だけではなく、効率性を追求し、証券市場を機能させ、革新と競争の健全化によって投資家を保護するという観点から、議会が(こうした一連の動きを)指示したことである。

[PR]
by nycyn | 2006-07-27 10:11 | 雑感