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アメリカの個人主義
2006年 07月 14日
昼間にドラッグストアに行った時、久しぶりに感じの悪い店員を見た。
NYも3年目だから慣れっこになってるけど、渡米直後はかなりムカついたもんだ。 そこで、当時の出来事を回想してみた。 * * * * * 渡米直後にデパートのMacy'sに行った時のこと。 やたら広いのでどこに何があるのか分からず、近くにいる店員に「コーヒー(豆)はどこに売ってる?」と聞いたら、あくびをしながら「知らねー」だって。 知らないなら他の店員に聞くとか、調べるとか、そういうこと出来んのか? 結局、その店員がいた場所のすぐ近くにコーヒーはあったんだけど。 同じくMacy's。 ここでは2年間で5回くらいしか買物したことないけど、そのうち2回、値段を間違えられそうになった。 1回は前述のコーヒーを見つけてレジに行った時、量り売りのコーヒーだったため袋に値段が表示されておらず、どうするのかと思って見ていたら、数秒間袋を見つめた後に12ドルとレジに打ち込んだ。 量り売りのところにいた姉さんは4.5ドルと言っていたのでその旨を伝えたところ、レジの野郎は「何だと!誰が言ったんだ?」とふてぶてしく言った。 僕がその姉さんを呼んできて姉さんからレジ野郎に説明してもらったところ、そいつは謝りもせずムスッとした顔で金額を訂正した。 奴は何を根拠に12ドルと打ち込んだのだろう。 もう1回は寝具を買った時、50ドルの寝具がレジに行くと110ドルに跳ね上がった。 どうやらバーコードが間違っていたらしいんだけど、その時もレジ野郎は無愛想に無言で金額を訂正した。 アタシがバーコードを付けたんじゃないわよ、って言いたいのかい? 2回とも金額を高い方に間違えられたけど、彼らは意図的に高く間違えているわけではなさそうだ。 彼らにとって店の利益・損失はどうでもよく、与えられた仕事を機械的にこなすだけである。 例えば、返品をする時、彼らは品物が買ったときの状態に保たれているかどうかのチェックをせず、どのような状態でも返品を受け付ける。 店にとっての利益など考えた事もないのだろう。 その証拠に、僕の知人は使用後のローラーブレードの返品に成功している。 ガイドブックでは「庶民的で親しみやすい世界一のデパート・メーシーズ♪」みたいに書いてあるけど、僕の印象は「大きいだけが特徴の二流スーパー」。 7月4日の花火(メーシーズ提供)はありがたいけどね。 なお、メーシーズには丁寧に接客してくれる店員もちゃんといる。 個人主義のアメリカ、全てが属人的。 僕のアパートには駐輪場が無く、自転車は隣の駐車場で保管することになっている。 この駐車場は狭いから地面に自転車を置くスペースが無く、壁から飛び出したフックに自転車の車輪をひっかけて吊るしている。 ある時、自転車を出そうと駐車場に行ったら、僕の自転車がえらい高い位置のフックに勝手に移動されていて、届かなかった。 降ろしてくれるよう係員に頼んだところ、その係員はそばに駐車してある新しい綺麗なBMWの屋根に土足で上がり、自転車をユサユサゆすって強引に降ろそうとした。 壁と自転車がこすれてモルタル壁の破片がバラバラと落下し、濃紺のBMWが「ごま塩」のようになり、その上を係員が土足で行ったり来たりして「やすりがけ」をしてる。 1分ぐらい挑戦して無理だと分かると、係員は「自転車を移動させたのは俺じゃない、マネージャーに相談してくれ」と言って去っていった。 BMWの持ち主からごま塩の文句を言われても、「車を綺麗に保つのは俺の責任じゃない」とか言うんだろう、奴は。 * * * * * 知り合いのアメリカ人にこれらの話をしたところ、「彼らは非常に安い給料で働いているから、自分に与えられた職務以外のことは一切やらない(だから諦めろ)」と言っていた。 「分からないことを客から質問されたら調べたり他の人に聞くように」とか、「自転車の持ち主が自転車が取れなくて困っていたら手伝うように」という内容が彼らの雇用契約の中に明記されていないと、彼らはそういうことはしないんだって。 自分の責任じゃなくても店を代表して顧客対応する、なんて感覚は微塵も無い。 個人主義はリーダーシップ、イニシアチブの発揮という観点から見習うべき点もあるけど、僕は弊害の方が多いと思っている。 多くの日本人だって、「会社のため・店のため」なんて心からは思っていないだろうが、最低限の顧客対応を行うくらいのモラルは持っているだろう。 上記知人もはっきりとは言わないけど、要するに彼らとは「階級」が異なるから同じ目線で物事を考えても無駄だ、ということらしい。 もちろん、愛想の良い店員だって沢山いるけど、悪態をつく輩の割合が日本とは比較にならないくらい高い。 ブランドショップや高級レストラン等、それなりのお金を払う店に行けば、それなりの対応はしてくれる。 結局はお金ですかねえ。 今日行ったドラッグストアでは、僕が会計をしようとレジに行くと、レジの店員は僕の存在に気付いているくせに隣の店員との会話をやめず、会話が終わったと思ったら目を閉じてリップクリームを塗り、僕が買った商品を汚いものでも触るかのように袋に投げ込み、面倒くさそうにため息をつきながら会計を処理した。 この手の対応には免疫が出来てるから、別に腹も立たないし、人間観察を楽しんでいる。 今では、店員があくびをしながらお釣りの5ドル札を投げて返してきても、笑顔でサンキューと言えるようになった。 くどいけど、こうした店員は少数派だ。 ただ、彼らが周囲から非難されることなく、のさばっていける環境がここにはある。 自由、個人主義、という名の甘やかし。 僕もアメリカの個人主義を少しは理解できるようになったのかな。
by nycyn
| 2006-07-14 09:05
| 雑感
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