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性善説と性悪説
2006年 05月 14日
アメリカでは多くの制度・考え方が性悪説に基づいていると思う。人間は本来悪いことをする生き物だから、事前に十分な防御策を講じておくべき、との考え。
例えばレストランのチップ。チップという金銭的なインセンティブが無いと、ウェイター・ウェイトレスは(固定給では)まじめに働かない、と考えられている。客が感謝の気持ちを表す、と言えば聞こえがいいけど、要はサボったり悪態をつかないようにするための防御策。クラスメートに「日本にチップの制度は無いけど顧客サービスはアメリカよりずっといいよ」と話したら、「そんな理想的なことはアメリカじゃ考えられん」と言ってた。 しかし、最近ではこのチップも形骸化してて、本来は客が自らの満足度合いでその額を決めるものだけど、レストランで目安と言われている18%を下回るチップを払った場合、(本来客が額を決めるはずの)チップの上乗せを要求してくる店もあるらしい。だから、現在ではチップの本来的な意義は失われているし、多くのチップを期待してサービスを向上させようという姿勢はあまり感じられない。 あと、アメリカで多いのは「牽制」。電話で予約とか買物をする時、まず最初に「この通話は録音されています(だから悪いことするなよ)」とかましてくることが多い。他にも、「○○をしたら××の罰則が適用されます」とか「○○の法律に基づいてあなたは××を守る義務があります」という警告をあちこちで目にする。そこまで目立つように掲示しないと、悪さをする奴が後を絶たないんだろう。ただし、これもチップ同様、みんな慣れっこになっちゃってて、僕も何とも思わなくなってきた。 一方、日本は性善説ベースのものが多い。 と思っていたけど、最近は性悪説ベースに変わってきつつある気がする。例えば、情報資産保護法の施行を受けて、社内の情報管理が異常に(過剰に)厳しくなった。僕の会社では、社外にメール送信する全てのファイルにパスワードを付けなければならず、簡単な懇親会の案内を送る時でもパスワード付で送るから、相手はウザがっている(に違いない)。日本人なら説明すれば分かってもらえるけど、外人にパスワード付ファイルを送って事情を説明するのは面倒だからやめて欲しいんだよね。"Why?"とか言ってないで、言われた通りパスワードを入力せい、って感じ。また、メールの宛先間違いによる誤送信を防ぐため、「メールの送信先は原則一人にすること」なんていうあきれたルールまでできちゃった。 今後、日本の多くの法律・制度は徐々に性悪説ベースの制度に移行していくのかもしれないけど、日本はこうした制度にあまり慣れていないから、どうしてもルールの適用が画一的になって効率が落ちている気がする。 アメリカ人はそもそもルールを厳格に守ろうという意識が薄いから、性悪説ベースの厳しいルールの下でも過剰なプレッシャーを感じることはない。また、警察が信号無視をする国だから、ルールを運営する側もある程度の「遊び」を持っている。 一方、日本人はアメリカ人に比べればはるかにまじめだから、ルールがあれば多くの人はきっちりとそれに従おうとする。また、わずかなミスも許さないような文化のせいで、前述のような画一的なパスワードルールが導入されたりするんだろう。アメリカみたいに「ミスは良くないけど100%防ぐことは出来ない」と、良い意味での「割り切り」が出来ないもんか。 これも時代の流れで仕方ないのかな、とも思うけど、もう少し運営を工夫して欲しいもんだよね。将来、日本のコンビニで「あなたの行動は全て録画されていますよー♪」というBGM?が一日中流れる日が来るかもしれない。 今日も天気予報は外れた。 アメリカは天気予報も性悪説?(意味不明)
by nycyn
| 2006-05-14 12:33
| 雑感
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